映画『いつも2人で』―愛の軌跡を旅する、オードリー・ヘプバーンの繊細な美
1967年に公開されたイギリス、アメリカ映画『いつも2人で』(原題:Two for the Road)は、オードリー・ヘプバーンとアルバート・フィニーが主演する、大人のためのラブストーリー。時間軸を自由に行き来しながら、1組の男女の結婚生活と心の変遷をフランスを舞台に描いた本作は、当時のハリウッド映画としては異色の構成を持つ作品です。
本記事では、本作のあらすじから見どころ、オードリー・ヘプバーンが演じた役柄とその魅力、そして多彩な衣装についてもご紹介します。
作品情報:
『いつも2人で』(原題:Two for the Road)(1967年公開)
出演:オードリー・ヘプバーン、アルバート・フィニー/監督:スタンリー・ドーネン
あらすじ
建築家のマーク(アルバート・フィニー)とその妻ジョアンナ(オードリー・ヘプバーン)は、結婚12年目の夫婦。フランス南部をドライブする途中、ふたりはこれまでの旅行を通しての記憶をたどっていく。
交際初期の無邪気な旅、結婚を決意した旅、娘と一緒に出かけた家族旅行、そして愛情が冷め、互いに他人を意識するようになった旅──。
一組の夫婦の「旅」と「時間」のモザイク。映画は、現在の冷めた関係と過去の様々な旅のエピソードを交互に描くことで、ふたりの関係がどう育ち、どう変化し、そしてどう壊れかけ、再びつながっていくかを描いていきます。
見どころ
『いつも2人で』最大の見どころは、非線形(ノンリニア)な物語構成です。過去と現在のエピソードがフラッシュバック的に交錯し、観客はパズルを組み立てるように夫婦の歴史を追っていきます。時系列を越えて描かれる「リアルな愛の変化」。映画としては大胆な手法でありながら、それが「愛の記憶」を描くにはぴったりな演出になっています。
また、フランス南部の風景や田園風景、高速道路やホテル、レストランなどのロケーションが美しく、旅の空気感と共に「時間の移ろい」も体感させてくれます。
コミカルなやりとり、苛立ち、沈黙、皮肉──感情の揺れを細やかに描写し、リアルな夫婦関係を見せてくれるのが本作の真骨頂です。
オードリー・ヘプバーンの役柄
この映画でのオードリー・ヘプバーンは、少女のような無垢さだけではなく、結婚生活における複雑な感情を抱えた大人の女性を繊細に演じています。
ジョアンナは、恋に落ちた頃の純真さも持ち合わせていながら、次第に夫との関係に悩み、怒り、諦め、そしてまた希望を見出していく…という感情の変化を表情や仕草の一つひとつに込めています。
これまでの役柄よりもリアルで生々しく、時に皮肉屋で、時にユーモラスで、時に涙ぐむ──まさに等身大の女性像を表現した貴重な作品です。
オードリー・ヘプバーンの衣装
『いつも2人で』では、オードリー・ヘプバーンのファッションの変遷も大きな見どころの一つです。登場するたびに違う服を着ていると言っても過言ではないほど、衣装のバリエーションは豊富。しかも、その服装が過去と現在を見分けるヒントにもなっており、衣装デザインがストーリーテリングの一部として機能しています。
この映画のオードリー・ヘプバーンは、以下のようなスタイルを着こなしています:
・オールホワイトのパンツルック、ルイ・ヴィトンのハンドバッグ、大きめのサングラスとクールなスタイル
・カーディガン、ブラウス、ロングスカート、メリージェーンと女生徒のようなスタイル
・バーバリーのトレンチコート、ジバンシィのタートルネックセーター、フェラガモのローファーとかっこいいスタイル
こうした変化する衣装は、時間の経過とジョアンナの心情の変化を表す記号ともなっており、オードリー・ヘプバーンのファッション・アイコンとしての魅力を最大限に引き出しています。
オードリー・ヘプバーンの見どころ
本作におけるオードリー・ヘプバーンの見どころを、いくつかに分けて紹介します。
1. 表情と間で語る名演技
言葉よりも“間”や“視線の動き”で感情を表現するシーンが多く、大人の演技力を感じさせます。とりわけ、無言で涙をこらえるシーンなどは、観る者の胸を打ちます。
2. コミカルな掛け合い
夫役のアルバート・フィニーとの掛け合いはテンポがよく、笑えるシーンも多数。皮肉やウィットに富んだセリフを軽やかに演じるオードリー・ヘプバーンも魅力的です。
3. ヘアスタイル&メイクの変化
物語の時系列とともに、髪型やメイクも変化していくのが印象的です。少女のようなショートボブから、しっとりとした大人のアップスタイルまで、衣装と共にスタイルの変化を見るのも本作の楽しみ。
4. “現実の恋愛”に生きるヒロイン像
王女やお嬢様を演じることの多かったオードリー・ヘプバーンが、本作では地に足の着いた女性を演じているという点で、キャリアにおける新たな一歩とも言える作品です。
まとめ
『いつも2人で』は、甘い恋愛映画でもなければ、劇的なドラマでもありません。けれども、結婚生活の喜びや苦悩、期待や失望、誤解や許しをこれほど丁寧に描いた作品はそう多くありません。
そしてそこに、オードリー・ヘプバーンという唯一無二の女優が存在することで、現実に根差しながらも、どこか詩的な愛の物語となっています。
『いつも2人で』は、大人の心に響く“愛の旅路”の記録。スタイリッシュな映像美、ウィットに富んだ脚本、豊かな感情表現──何度観ても新しい発見のある映画です。夫婦のあり方や人生のパートナーシップに興味がある方は、ぜひ一度観てみてください。