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映画『昼下りの情事』―パリの風と恋の駆け引き、オードリー・ヘプバーンの瑞々しい魅力に包まれて

1957年に公開されたアメリカ映画『昼下りの情事』(原題:Love in the Afternoon)は、恋愛のときめきと切なさ、そしてパリの香り漂うエレガンスを併せ持ったロマンティック・コメディの名作です。監督・脚本は名匠ビリー・ワイルダー。主演はオードリー・ヘプバーンとゲイリー・クーパーという豪華な顔ぶれで、ユーモアとセンチメンタルな空気が絶妙に交差する作品に仕上がっています。


作品情報:
『昼下りの情事』(原題:Love in the Afternoon)(1957年公開)
出演:ゲイリー・クーパー、オードリー・ヘプバーン、モーリス・シュヴァリエ/監督:ビリー・ワイルダー


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あらすじ

舞台は1950年代のパリ。主人公は私立探偵クロード・シェヴァリエ(モーリス・シヴァル)を父に持つ若く純粋な娘、アリアーヌ・シェヴァリエ(オードリー・ヘプバーン)。彼女は父の探偵事務所でこっそりと依頼内容を盗み聞きする癖があり、大人の世界に興味津々。


ある日、父が受けた浮気調査の依頼から、アリアーヌはアメリカ人実業家フランク・フラナガン(ゲイリー・クーパー)の存在を知ります。彼はプレイボーイとして知られる男で、依頼人の妻とも親密な関係を持っていたのです。妻の夫が怒りに燃えてフラナガンを殺そうとしていることを知ったアリアーヌは、彼を救うべくホテルの部屋に飛び込んでその場をしのぎます。


こうして出会ったフラナガンとアリアーヌ。年齢差や生活の違いを越えて、アリアーヌは彼に惹かれていきます。しかし、遊び慣れたフラナガンにとって、彼女の正体も気持ちもすぐには理解できません。アリアーヌは自らを経験豊富な恋多き女性として装い、フラナガンの気を引こうとしますが、そのうちに自分の心が傷ついていくことに気づきます。


果たして、2人の関係は本物の恋へと変わっていくのでしょうか?

見どころ

『昼下りの情事』の最大の魅力は、何と言ってもウィットに富んだ脚本と、パリという街が醸し出す優雅で夢のような雰囲気です。監督ビリー・ワイルダーは、ロマンティックでありながらも、どこか冷静でリアリスティックな視点を忘れない名手。物語に一筋縄ではいかない複雑さと余韻を与えています。


さらに、ゲイリー・クーパー演じるフラナガンと、オードリー・ヘプバーン演じるアリアーヌの対照的なキャラクターが織りなす恋の駆け引きも見どころ。年齢差のある恋愛を、軽妙さと切なさのバランスを取りつつ描いており、甘さの中にほろ苦さを感じさせてくれます。


加えて、登場するクラシック音楽の数々(とくに「魅惑のワルツ」)も印象的で、観る者の感情をやわらかく包み込んでくれる要素の一つとなっています。

オードリー・ヘプバーンの役柄

オードリー・ヘプバーンが演じるアリアーヌは、恋に憧れる一人の少女から、等身大の女性へと成長していく過程が魅力的に描かれています。父親の仕事を通じて知った"大人の世界"に触れながらも、自分自身の恋心と向き合い、葛藤し、そして決意する姿は、非常に繊細かつ感情豊かに表現されています。


アリアーヌは、表面的には気取った"恋の達人"を演じていますが、その実、恋に不器用な少女のまま。そんな矛盾や不安定さを、オードリー・ヘプバーンはしなやかな演技で体現しており、観る者は彼女の感情の揺れ動きに心を重ねずにはいられません。

オードリー・ヘプバーンの衣装

『昼下りの情事』の衣装は、オードリー・ヘプバーンのファッションアイコンとしての地位を確立するうえでも重要な要素でした。衣装デザインを担当したのは、彼女の生涯の友人であり専属デザイナーでもあるユベール・ド・ジバンシィ。シンプルでありながらも洗練されたライン、少女らしさと上品さを兼ね備えたデザインが、アリアーヌというキャラクターの純粋さと気品を際立たせています。


黒のドレス、クラシックなトレンチコート、細身のパンツスタイル、レースのブラウス、そして大きなつばの帽子など、パリジェンヌらしいエレガントな装いが印象的。特に、アリアーヌがホテルでフラナガンと再会するシーンで着ている黒いチュールのドレスは、多くのファッションファンの記憶に残る名衣装の一つです。


オードリー・ヘプバーンの細身で華奢な体型を最大限に生かしたジバンシィのデザインは、まさにアリアーヌという人物の内面と外見をつなぐ"第二の皮膚"のように感じられます。


また、日本ではアリアーヌがスカーフを頭に巻いたスタイルにも注目が集まり「アリアーヌ巻き」と呼ばれ大流行しました。欧米で広く定着した名称ではありませんが、映画をきっかけにオードリー・ヘプバーン風のスカーフの使い方が流行したのは確かです。

オードリー・ヘプバーンの見どころ

この映画におけるオードリー・ヘプバーンの見どころは、彼女が持つ少女のような無垢さと、大人びた恋愛感情との間で揺れ動く微妙なニュアンスを、圧倒的な自然さで演じている点です。


特に、恋する気持ちを抑えきれずにフラナガンの前で涙を見せるシーンや、愛しているがゆえに彼から離れようとする場面では、セリフ以上に彼女の表情や仕草が語りかけてきます。


また、彼女のしなやかな身体表現、音楽と調和する演技、そしてどこか儚げでアンバランスな魅力が、アリアーヌというキャラクターを特別な存在に昇華させています。まさに、この映画はオードリー・ヘプバーンの感性が光る一作といえるでしょう。

まとめ

『昼下りの情事』は、恋の不安と高揚を丁寧に描き出した、大人のためのロマンティック・コメディです。パリの街を背景に繰り広げられる繊細な恋愛模様、そしてオードリー・ヘプバーンの美しさと演技の深みが相まって、時を超えて愛される作品となっています。


観るたびに新たな発見があり、恋愛の本質や人間の不器用さを静かに教えてくれる本作。派手さはないものの、しっとりと心に残る珠玉のラブストーリーとして、多くの映画ファンにおすすめしたい一作です。


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