映画『麗しのサブリナ』―オードリー・ヘプバーンが魅せるシンデレラのような変身と、大人の恋が交差するエレガント・ラブストーリー
1954年に公開されたアメリカ映画『麗しのサブリナ』(原題:Sabrina)は、平凡な少女が“麗しいレディ”へと変身するロマンティック・コメディです。監督は名匠ビリー・ワイルダー、主演はオードリー・ヘプバーン、ハンフリー・ボガート、ウィリアム・ホールデンという豪華な顔ぶれで、ヘプバーンの魅力が存分に発揮された作品として知られています。
作品情報:
『麗しのサブリナ』(原題:Sabrina)(1954年公開)
出演:ハンフリー・ボガード、オードリー・ヘプバーン、ウィリアム・ホールデン/監督:ビリー・ワイルダー
あらすじ
舞台はニューヨーク近郊、ララビー家の広大な屋敷。物語の主人公は、サブリナ・フェアチャイルド(オードリー・ヘプバーン)。彼女は裕福なララビー家の屋敷で働く運転手の娘で、幼い頃からララビー家の次男・デヴィッド(ウィリアム・ホールデン)に密かな恋心を抱いています。
しかし、プレイボーイのデヴィッドはサブリナの想いに気づかず、社交界の女性たちと浮名を流す日々。失恋の痛みを忘れるため、サブリナは父の計らいでパリへ留学することになります。
2年後――サブリナは洗練された女性へと変身して帰国。まるで別人のような美しさに、デヴィッドもたちまち心を奪われてしまいます。だが、ララビー家の長男であり、実業家のライナス(ハンフリー・ボガート)は、弟の浮ついた恋愛が一族のビジネスに悪影響を及ぼすことを恐れ、計算ずくでサブリナに接近。
やがて、サブリナとライナスの間に思いもよらぬ感情が芽生えていくのですが――。
見どころ
『麗しのサブリナ』は、「変身」「三角関係」「自立」という普遍的なテーマを、エレガントなタッチで描き出した作品です。
1. 平凡な少女からパリ仕込みのレディへの変身
「おとぎ話のような変身劇」は、観る者の夢を刺激します。オードリー・ヘプバーンの持つ透明感や品格が、サブリナというキャラクターに説得力を与え、観客を自然と物語に引き込んでいきます。
2. 大人の恋愛模様
華やかなロマンスの裏には、家族経営の複雑さや、経済的な打算なども交錯します。若さゆえの憧れから、自分の意思で愛を選び取るまでのサブリナの心の成長も見どころです。
3. 名優たちの競演
オードリー・ヘプバーンと対をなすのが、ハンフリー・ボガートというのも魅力的な配役です。若さと奔放さを象徴するウィリアム・ホールデンとの対比が物語を引き締めています。
オードリー・ヘプバーンの役柄
サブリナ・フェアチャイルドは、運転手の娘という立場ながら、幼い頃からララビー家の上流社会に触れて育った女性。彼女の最大の魅力は、夢見がちな少女の純粋さと、パリで培った品格ある女性らしさのバランスです。
オードリー・ヘプバーンは、前半の内気で目立たないサブリナから、後半の自信に満ちた女性像への変化を、表情、声のトーン、立ち居振る舞いのすべてで巧みに演じ分けています。この演技の変遷にこそ、彼女の演技力の高さと天性のカリスマが宿っています。
サブリナは誰かに選ばれる存在ではなく、「自分が誰を愛するか」を自ら選ぶようになる。オードリー・ヘプバーンの演技がそれを見事に表現しており、観る人の心に長く残るヒロイン像となっています。
オードリー・ヘプバーンの衣装
本作のもうひとつの大きな魅力は、オードリー・ヘプバーンのファッションです。
この映画でのオードリー・ヘプバーンの衣装は、彼女のスタイルアイコンとしての地位を確立したものです。デザイナーはパラマウントの衣装デザイナー、イーディス・ヘッド。そしてフランスのファッションデザイナー、ユベール・ド・ジバンシィが初めて彼女のために衣装をデザインしたことでも有名で、特に黒のカクテルドレスやパリ帰りのシーンで着用したエレガントなガウンは、今もなおファッション史に残る名作とされています。シンプルでありながら洗練されたラインと、上品な佇まいがヘプバーンの魅力を最大限に引き出しています。
代表的な衣装としては、
パリ帰りのサブリナが着るブラック・ジャージー・スーツ:
ファッションモデルと同じものをジャストフィットで着こなしたオードリー・ヘプバーンにジバンシィが驚いたそう。その姿はまさにパリ・ジェンヌ。
舞踏会のシーンのホワイト・カクテル・ガウン:
チュール素材と刺繍が繊細にあしらわれた一着で、サブリナの変身ぶりを象徴する。こちらもジバンシィのコレクション。
クロップド丈のスリムパンツ:
イーディスがデザインしたこのスリムパンツは後に“サブリナ・パンツ”として知られるようになり、1950年代のモードを象徴するアイテムとなりました。カジュアルでありながら品のあるそのデザインは、今なお多くの人々に愛されています。
どれもが1950年代のエレガンスを体現したスタイルであり、映画史に残るファッションアイコンとしての地位を確立しました。
オードリー・ヘプバーンの見どころ
1. パリ帰りの登場シーン
汽車から降り立つサブリナの姿は、まさに“別人”のよう。初めて観た観客でさえ「美しい」と息を呑む瞬間です。演技とファッションが融合した代表的なワンシーン。
2. デヴィッドとの再会
かつて相手にされなかった相手に「誰だかわからないほど魅力的」と言わしめるその変化は、サブリナの成長を象徴しています。
3. ライナスとの心のやりとり
計算ずくで近づいてきたライナスに対し、サブリナは次第に心を開いていきます。冷静で堅物なライナスが、サブリナの純粋さによって変化していく過程は、本作の隠れた感動ポイントです。
4. 終盤の選択
どちらを選ぶのか。サブリナがどんな決断をするのか。そこに彼女自身の“自立した女性としての目覚め”が表れています。
まとめ
『麗しのサブリナ』は、少女の成長と恋愛、そして自己実現をロマンティックかつエレガントに描いた傑作です。
洗練された脚本、魅力的なキャスト、上質なファッション、音楽、すべてが美しく調和し、観るたびに新しい発見がある作品です。特にオードリー・ヘプバーンのファンにとっては、彼女の“変身”がいかに心を打つかを体感できる、記念碑的な一本でしょう。
「人は外見だけで変わるわけではない」――本作はそう語りながら、内面の変化がいかに人生を導くかを教えてくれる、タイムレスなラブストーリーです。